以前の投稿で、東北大学によるセルロースナノファイバー蓄電デバイスの発表についてご紹介させていただきました。
https://www.shittaka-naturalscience.com/ファンデルワールス力について/
こちらの開発内容のハイライトは、セルロースナノファイバー(CNF)を用いて電極の凹凸を微細化することでファンデルワールス力が効き、物理的に電子の吸着量が増加する、といった内容でした。
本日は、自然界でファンデルワールス力を活用している生き物=ヤモリに注目したいと思います。
ヤモリが垂直な壁にくっつくことができる理由
南国のホテルの壁や天井にヤモリがくっついているのを見て、どうしてあんなことができるのか不思議に感じたことはないでしょうか。
実は、ヤモリの手足の指には非常に微細な毛がびっしりと生えています。
セータと呼ばれる長さ約100μmの毛が一本の足に数十万本生えており、セータの先端部分からはスパチュラと呼ばれるさらに細い(数百nmオーダー)毛が生えています。
この細い毛が狭い場所に密集して生えているおかげで、ヤモリの手足と壁との間にはファンデルワールス力というごく短い距離の間だけで働く分子間力が効くようになっているのです。
ヤモリは手足が吸盤構造をしているから壁にくっつくことができているわけではないんですね。
ヤモリの本当の凄さは壁から自由に手足を剥がせること
しかし、ファンデルワールス力が効いたままだと、一度壁にくっついたヤモリはそこを動けなくなってしまうような気がしませんか?
ヤモリの本当の凄さは、ファンデルワールス力を効かせる/効かせないを自由にコントロールし、壁に手足をくっつけたり剥がしたりを自由にできるところにあります。
スパチュラと呼ばれる数百nmオーダーの細い毛は、壁面に対して斜めに当たるように生えているだけでなく、円弧を描いたような形状になっています。
ヤモリは手足を壁に接触させた状態で水平方向に押したり引いたりすることで、スパチュラが壁に当たる角度と接触面積をコントロールし、ファンデルワールス力を強めたり弱めたりしているのです。
ファンデルワールス力を活かした接着機構の開発
最近では、生物の体の仕組みを模倣してものづくりを行う「バイオミメティクス」が盛んですが、ヤモリの手足の構造を模倣して吸盤や粘着剤を用いずに接着と解除を自由に行うことを目標とする試みもなされています。
革新的な発明に期待したいですね。