スーパーカミオカンデで用いられる超純水
スーパーカミオカンデでは約5万トンの水が使用されていますが、それらは膜分離技術やイオン交換技術を用いて作られた超純水です。
ニュートリノが水に衝突する事で発生するチェレンコフ光は非常に微弱です。
水中に異物や不純物があるとそれらがノイズとなり電子倍増管がチェレンコフ光を正確に認識できない恐れがるため、超純水が使用されているのだそうです。
スーパーカミオカンデの水浄化装置は東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設の運営するウェブサイトに掲載されています。
(以下が参照元です↓)
こちらを見ると、超純水製造の肝となる装置は(1)逆浸透膜・UF膜といった膜分離技術と、(2)イオン交換樹脂によるイオン除去技術ということができると思います。
(1)膜分離技術
膜分離とは、所定の大きさの細孔が開いたフィルムを用い、圧力をかけて水をこのフィルムに通すことで不純物を濾過する技術です。
UF膜で粒径約10nm以上の有機物・ウイルス・タンパク質などを除去でき、逆浸透膜だと粒径約0.1nm程度からと、塩イオンの除去が可能になります。
逆浸透膜は海水を淡水化する浄水プラントで使用されていることでも有名ですね。
(2)イオン交換技術
イオン交換もフィルムが用いられることが多いですが、そのフィルムには2種類のイオン交換樹脂が用いられています。
正電荷を持つ陽イオンを除去する陽イオン交換樹脂と、負電荷を持つ陰イオンを除去する陰イオン交換樹脂です。
イオン交換のシステムはいくつか種類がありますが、代表的なものの一つである電気透析法では、浄化したい水の中に一対の電極を入れて電気を流し、水の中にある陽イオンと陰イオンがそれぞれ電気泳動で反対の極に引きつけられる原理を利用して脱塩を行います。
水に溶けている金属やイオン成分の除去率は、圧力駆動の膜分離よりも高いとされています。
膜分離技術とイオン交換膜技術との違い
膜分離は基本的に1プロセスに膜を1種類のみ使用するのに対し、イオン交換の場合は基本的に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の2種類を対で使用します。
また、膜分離が膜を介して”不純物を移動させず水を移動させる”のに対し、イオン交換が膜を介して”水を移動させずイオンを移動させる”という違いがあります。
さて、今回は超純水製造のための水処理技術をご紹介させていただきました。
世界人口の増加による淡水需要の増加や、環境汚染の進行などにより、水処理技術の発展には今後も大きな期待がかけられています。
注目していきたい分野です。