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天体までの距離の測り方

先日の月食を見て楽しまれた方がいらっしゃったと思います。
では、地球から月までの距離はどの程度かご存知でしょうか?
約38万キロメートルだそうです。
地球の表面をぐるっと一周、例えば赤道上をぐるっと一周したときの地球の円周は4万キロメートルですので、地球から月までの距離は地球の円周の約9.5倍ということになります。

月やその他の太陽系内の天体のように、私たちが実際に探査機や宇宙飛行士を送ることができる天体ならまだしも、さらに遠方にある天体までの距離をどのように求めることができるのでしょうか?
今回はその主な手法3つをご紹介したいと思います。

年周視差を用いる方法

地球は太陽の周りを公転しています。
例えば夏と冬では地球は太陽を挟んで反対の場所に位置しますので、夏と冬に同じ天体を見たとしても見える角度が異なります。
これを視差といいます。
腕を伸ばして指を立て、片目でその指を見た時、右目で見た時と左目で見た時とでは指の位置がジャンプしたようにずれて見えますね。
これも視差です。

 

地球と太陽の距離は1.5億光年であることがわかっているので、天体について見える角度のずれ(=年周視差)を用い、太陽と地球とそれからもう一つの天体を結んだ巨大な直角三角形で三角測量を行う要領で、天体までの距離が計算できる、というわけです。
天体が遠くなればなるほど年周視差(角度のずれ)が小さくなり観測が難しくなりますので、この方法が使えるのは比較的近くの天体に限定されます。
具体的にはおおよそ10キロパーセク(3万光年)まで離れた天体で適用できるとされています。
天の川銀河の直径がおおよそ10万光年ですので、あくまで天の川銀河内のご近所の天体に使える方法ということになります。

セファイド型変光星を用いる方法

セファイド型変光星というのはケフェウス型変光星とも呼ばれ、ケフェウス座デルタ星の明るさが周期的に変化することを元に名付けられたものです。

 

セファイド型変光星は明暗の周期が長ければ長いほど実際の明るさ(絶対等級)が大きいことがわかっており、絶対等級と見かけの明るさとを比較して距離を推定することができます。
絶対等級が大きいのに見かけの明るさが暗いということはその天体が遠くにあることを意味し、逆に絶対等級が小さいのに見かけの明るさが明るい場合はその天体が近くにあることを意味します。

 

この方法でアンドロメダ銀河など天の川銀河の外側にある天体までの距離を推定することができるようになりました。

渦巻銀河を用いる方法

セファイド型変光星の明暗周期を観測できないほど遠方にある天体、例えば10メガパーセク(=3,000万光年)以上遠方の天体については、渦巻銀河の回転速度を観測することによって推定することができます。
渦巻銀河の回転速度はその絶対光度との間に相関関係があると言われています。
渦巻銀河の回転速度はその銀河全体に含まれる質量の大きさにより決まるのですが、銀河を構成する天体は水素やヘリウムなどの元素が核融合して光っているため、銀河全体の明るさ=銀河全体の質量=銀河の回転速度という相関関係が成り立つわけです。

 

よって、銀河の回転速度を観測することでその銀河の絶対光度がわかり、絶対光度と見かけの明るさとを比較することで地球からの距離を推定することができるというものです。
この手法を適用することで100メガパーセク(=3億光年)程度までの距離を推定することができるそうです。

 

今回3つの手法をご紹介させていただきましたが、さらに遠方の天体までの距離を推定する方法も確立されています。
また機会を改めてご紹介させていただきたいと思います。

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ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。