本ブログでたびたびご紹介してきました、アランナ・コリン著、矢野真千子訳『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』に関して、本日も驚きの内容をご紹介をしたいと思います。
微生物へのアウトソーシング
以前の投稿で、人は体内の活動の一部を微生物にアウトソーシングすることで複雑な生命活動を維持している旨をご紹介させていただきました。
例えば、私たちは食事をするとまず遺伝的メカニズムで作られる酵素を分泌してそれらを分解し小腸で吸収します。
しかし多くは消化されずにそのまま大腸へ移動し、そこで微生物の助けを借りるそうなのです。(以下引用)
大腸には微生物集団が待ち構えていて、微生物自身の酵素を使って残り物を分解する。
微生物は自分に必要なものを吸収したら、更なる残り物を作り出す。
この残り物の分子と水分が、学校で習ったように大腸で吸収されて血液中に入る。
パンダやコアラも人間と同類
上記のように微生物に体内活動の一部をアウトソーシングする動物は人間だけでは無い、とも本書では述べられています。
例えばパンダですが、本来は肉食目の遺伝子を持つパンダが竹の茎や葉を消化できるのは腸内微生物がセルロースを分解する遺伝子を持つからだそうです。
またコアラも同様で、コアラ自身の遺伝子にはユーカリから栄養を引き出せる酵素を作る能力は無く、腸内微生物にユーカリの葉を分解させているというのです。
出産の瞬間に微生物セットをプレゼント
コアラについてさらに面白いのは、生まれたばかりの赤ちゃんコアラの腸内にはユーカリの葉を分解できる微生物が存在せず、微生物は母親コアラから子コアラに引き継がれるものなのだそうです。
母コアラが糞便に似た離乳食「パップ」(分解されたユーカリの葉と腸内細菌の混合物)を子コアラに与えることで、子コアラの腸内に微生物が定着しユーカリの葉を食べることができるようになるのだと。
また何と、母親から子供に微生物をプレゼントするのは人間も一緒で、赤ちゃんは出産時、産道を通る時に膣内の微生物を皮膚につけながら生まれてくるそうです。
また、膣口が肛門のすぐそばにあることから、母親が出産時にもよおす便を体につけながら生まれてくるそうで、このように赤ちゃんは母親から微生物セットをプレゼントされてこの世に生を受けるのだそうです。
乳酸菌の機能
人間の新生児は出産時に母親からプレゼントされた微生物により、腸内に母親の膣内からもたらされた菌種や菌株が育つのですが、中でも一番多いのはラクトバチルス属と呼ばれる乳酸菌の一種だそうです。
ラクトバチルスは自分で抗生物質を作り出し、新生児の体を外敵の病原体から守る機能があることがわかっているそうです。
微生物に感染症に対する防御機能をアウトソーシングしている例と言えるでしょう。
私たちは腸内細菌など微生物たちによってもたらされる恩恵に預かって日々の生活を送っており、微生物たちが健やかに過ごせるように食生活の改善など腸内環境の整備に勤める意義が大いにあるのです。