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RO膜は拡大する淡水需要充足の切り札

RO膜は拡大する淡水需要充足の切り札

前回・前々回の投稿ではイオン交換膜を取り上げましたが、今回は水処理技術のもう一つの柱である膜分離技術、特にRO膜(逆浸透膜)について取り上げたいと思います。
なぜかというと、RO膜は、
  • 世界人口増加による飲料水需要の継続的な増加
  • 経済発展を支える発電用や半導体製造用の純水需要
  • 中国など環境規制の強化に伴う工業廃水の浄化需要
などを一手に引き受ける、とても優秀な技術だからです。

膜分離技術と伝統的な蒸発法との違い

まず、膜分離技術が既存の浄水技術とどう異なるのかを説明します。
膜分離技術は、所定の大きさの細孔が開いたフィルムを用い、圧力をかけて水をこのフィルムに通すことで不純物を濾過する技術です。
この細孔をどこまで小さく、かつ安定的に作り込むことができるか、さらに実用可能なコストで生産することができるかといった技術が過去数十年間で磨かれてきました。
この技術が完成する以前の浄水技術は、伝統的な蒸発法に大きく頼っていました。
蒸発法は、海水を熱して蒸留水を得る例のように、液体を熱して蒸気を作ることで液中の固形分を除去する方法です。
水を加熱するためにエネルギーを大量に使用しなければならないため、どうしても膜分離技術と比較するとエネルギーの消費量 が大きくなります。
しかし膜技術、特にRO膜のような精緻な濾過が可能な膜技術が熟成されるまでは、海水から塩を取り除き飲料水にするといったレベルでの浄水は蒸発法に頼らざるを得なかったんですね。

RO膜はどんな技術か

RO膜(逆浸透膜)は、PET不織布を基材として、ポリスルホン層とポリアミド層を塗工した三層構造になっているのが主流です。
膜分離技術の中でのRO膜の位置付けは、最も濾過精度が高い膜として分類されます。
以下リンクは水処理膜メーカー大手である日東電工のウェブサイトです。
膜の種類によって分離できる対象物質が変わるのがわかると思います。

 

https://tape-omakase-navi.com/membrane

 

一般的なRO膜は、品番にもよりますが塩除去率が99%以上のものが多く、非常に濾過精度が高いと言えます。
日本に住んでいると海水淡水化はピンとこない用途だと思いますが、世界には例えば中東のように海水以外に水がない地域があるわけです。
また、水道水の水質が悪く、日本の住宅で使用される浄水器とは段違いの性能の高さの浄水器の需要が存在する国があります。
淡水需要の増加に伴い、RO膜需要は当面の間は増加して行くと予想されています。

課題もある

伝統的な蒸発法と比較してエネルギー消費量が小さく、淡水需要充足の切り札と目されるRO膜(逆浸透膜)法ですが、全く課題がないわけではありません。
RO膜を用いた浄水システムが普及するにつれて、RO膜浄水プラントで消費されるエネルギー(具体的には電力消費)が、蒸発法よりは小さいものの無視できないものとなってきています。
RO膜浄水プラントで発生するコストのうち、電気代が相当な比率を占めると言われています。
これに関しては、RO膜浄水プラントに近接する施設(例えば工場や発電所)からの排熱を利用するなど、効率的な稼働を行うための工夫が検討されてきています。

最後に

以上、RO膜(逆浸透膜)についてご紹介させていただきました。
私たち日本人にとっては蛇口をひねれば綺麗な水が出てくるのが当たり前ですが、そうではない国・地域がたくさんあります。
また純水製造や工場廃水の浄化など、工業用途で要求される高度な水処理の世界があります。
それらの場面でRO膜(逆浸透膜)の技術は現在のところ切り札と言えるのです。

ABOUT ME
ichiro.k
53歳。大手素材メーカーで複数の営業部門、複数のスタッフ部門を渡り歩き、50歳を過ぎて新規用途探索・製品開発に関わる。文系の学部卒で後にMBAを取得した超文系人間だが、周りが理系だらけの職場で長年勤務することで技術の「知ったかぶり」が得意技に。本ブログでも何となくわかったかのような技術ネタを、さわりだけご紹介し読者の方々の「知ったかぶり」度向上に貢献します。